地域に潜在する看護資格者を活用
中古車販売会社と事務所を共有
キャンナスという名称で訪問看護 介護・送迎 家事支援のサービスを提供しているボランティア団体は神奈川県下で三カ所、愛知、高知に一カ所ずつ、更に北海道、高知、三重、石川などで開設の準備がすすめられている。代表は全て別の人間だが、すべての母体となったのは、神奈川県藤沢市にある「ボランティアナースの会 キャンナス」だ。代表の菅原由美さんが
「キャンナス」を発足させたのは4年前。当時はこれほどまでに全国的な広がりを見せるとはおもいもよらなかったという。
「活動を始めてから志を同じくする人たちが次々と現れて、あれよあれよという間に全国に広がりました。同じ名前にする必要はないといったのですが、そういう風にいって頂いて、やはり皆さん心のよりどころといいますか、強い横のつながりを求めているというとがありましたので、キャンナスという名前を使ってもらっています」(菅原さん)4年前までは夫の経営する会社を手伝っていたという菅原さんだが、それ以前に看護婦の資格を取得していた。100歳まで生きた義理の祖母やガンで亡くなった母親を見ながら、在宅の重要性を肌で感じ、訪問看護への興味を深めていったという。
『地域には看護婦の資格をもちながら職に就いていない女性がたくさんいるだろうと思っていました。彼女たちがちょっとしたサポートをするだけで、在宅での治療を望む患者さんの希望を叶えてあげられると思ったんです。』(菅原さん)
そして契機となったのはやはり、阪神・淡路大震災だった。ボランティアとして現地に飛んだ菅原さんは、そこでAMDAと出会う。
『非常に有意義な活動をさせてもらったとともに、素晴らしい方たちに出会うことが出来ました。その方々に励まされて、このキャンナスを立ち上げる気になれたのです』(菅原さん)
そして、1997年3月、AMDAの活動で知り合った養護学校教員と二人で『キャンナス』を立ち上げた。事務所は夫の経営する中古車販売会社と共有。まさに草の根団体のスタートだった。しかし、地元マスコミを通じて広報したボランティアナースの説明会には、60名
以上の参加者が集まったという。『潜在看護婦の多さを実感するとともに、やっていけるという手ごたえを感じました』【菅原さん】現在「キャンナス」に登録する看護婦は100人を超える。その八割が主婦だ。
介護保険適用の事業所を併設『互助のシステム』を『互助の精神』が補完
「キャンナス」ではそのサービスを有償で提供している。看護婦資格取得者が訪問するケースでは、利用・協力金として1時間1600円、ヘルパーや無資格者の場合は1時間1200円を利用者から受け取っている。菅原さんはあえて有償とすることの重要性を強調する。
『ボランティアなのに有償ということに批判もありましたし、一方で訪問看護の時給が1600円というのは看護婦の価格破壊だという指摘もありました。しかし、額に付いてはともかく、私は無償というのは反対です。見返りを期待してやっているわけではありません。
ただ、日本人は無料で何かをしてもらうと必ずお返しをします。結果的に負担をかけるわけです。それでいて、無料ということになればわがままも言えず、我慢せざるを得ないケースも出てきます』『菅原さん』
わがままをさせてあげるべきだといっているのではない。無償ということに負い目を感じる以上、それが遠慮となり、自分の望む時間や曜日を主張できないこともある。相性の悪い看護婦・ヘルパーが担当となっても、代えてほしいとはいいづらいということもあるだろう。さらには今の年金世代には、わがままを金に換えたいといえるだけの余裕があるということも理由と考えられる。『どうしても払えないという人からは取らなくてもいいんです。けれど、現状ではそういう利用者はいません。むしろ私は高齢者より、障害児を抱えた30代の世帯にそうしたボランティアが必要なのではと思っています。
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